大判例

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高松高等裁判所 昭和30年(う)163号 判決

論旨は、被告人の本件担保物件たる動産を処分した行為は、保証協会に対する関係においては横領行為であり、これを質に取り又は買い受けた善意の第三者はそれの動産の上に行使すべき権利を取得し何等法律上の被害を受けないのであつて、原審が本件被告人の所為を詐欺と認定したのは、事実誤認、擬律の錯誤、審理不尽であると言うのである。

本件記録を精査し総べての証拠を検討するに

原判決挙示の証拠により

被告人は松山市湯渡町二三番地の中予ゴム工業協同組合の代表理事として同組合の業務を執行していたものであるが、昭和二十七年十二月二十七日同協同組合が商工組合中央金庫から百万円の融資を受けた際、松山市二番町四五番地の財団法人愛媛県信用保証協会は右協同組合の債務を保証し、これがため同協同組合は同保証協会に対し同協同組合所有の五馬力発動機、十馬力発動機、二馬力発動機各一台、押出機、カレンダー、練ロール、減速機、五十馬力発動機各一台その他の動産を譲渡担保に供し、占有改定によつてそれらの物件の引渡しを為し、同ゴム工業協同組合はこれらを使用貸借によりそのまゝ引き続いて占有していた。ところが被告人は同ゴム工業協同組合の資金を調達するため、その占有にかゝる右信用保証協会の所有に属する動産を擅に他に処分しようと企て

1 昭和二十八年八月一日頃松山市南立花町二丁目六番地の質屋池田正幸方で前示五馬力発動機、十馬力発動機各一台を二万円で質入れをなし

2 同年十一月頃松山市三番町二四番地電気水道株式会社で同会社に前示二馬力の発動機一台を代金六千円で売却し

3 同年十二月二十二日頃松山市中村拓川町県営住宅二七号の屑鉄業萩野祐保方で同人に前示押出機一台を代金約一万五千七百円で売却し

4 同年十二月下旬大阪市東成区大成通三丁目二七番地森村長次郎方でゴム製品販売業浜田孝一に前示カレンダー一台を代金六万円で売却し

5 昭和二十九年一月中旬前示森村方で前示浜田孝一に前示練ロール、減速機、五十馬力の発動機各一台を代金四十万円で売却し

以てこれらを横領した事実を認めることができる。

原判決は、被告人は右各物件が担保物件であることを秘匿して質権者、買受人を欺罔して質入金又は売買代金名下にそれぞれ前示金銭を騙取したものであるとの詐欺罪の事実を認定しているが、被告人は右質受人又は買受人に対し特に欺罔手段を弄したとは認められず、ただ単に譲渡担保に入つていることを秘して質入れ又は売却したに過ぎないのであり、右質受け又は買受けによつてこれらの者は民法第百九十二条によりそれらの物件上に質権又は所有権を取得し、何等の被害を蒙らなかつたものと認められるのであつて、前示認定の通り横領罪たる事実の外に詐欺の事実は認め難いのである。原判決が本件につき詐欺の事実を認定したのは判決に影響を及ぼす事実誤認である。

(裁判長判事 坂本徹章 判事 塩田宇三郎 判事 渡辺進)

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